不動産小口化商品ー財産拡大と相続税対策

少ない資金でも優良不動産を購入できる不動産小口化商品について記載します。

不動産小口化商品は、一つの不動産を100万円から1,000万円程度に細分化した持分を購入するものです。このため、一棟では高額となり購入しづらい、資産価値の高い優良物件を、予算に応じて購入できることになります。

どう小口化するかですが、不動産小口化商品は、一棟すべてを同じ比率で細分化します。1階や2階などの物理的な細分化ではありません。不動産小口化商品を購入するとは、一棟全体を持分割合で取得したという意味となります。

収入面で言い換えると、購入した不動産小口化商品からの収入は、1階や2階などのテナントごとに区分された収入ではなく、一棟すべての収入を、各購入者の出資割合に応じて按分された収入を得ることになります。

例えば、一棟10億円の不動産の手取り収入が毎年3千万円である場合、1,000万円の出資では30万円(3千万円×1%(1,000万円÷10億円))。1億円の出資であれば、毎年300万円(3千万円×10%(1億円÷10億円))分配されることになります。

都心の優良な不動産を一棟丸ごと購入することが資金的に難しい場合や、様々な投資案件に分散して投資したい場合、小口化された不動産であれば、100万円~1000万円程度から各人の予算内で、該当物件を購入することがでます。

 メリット

①少ない資金で優良不動産を取得可能

先に述べた通りです。高額となる都心の優良不動産を、予算に応じて取得できます。

不動産小口化商品の対象となる物件ですが、不動産小口化商品を組成する不動産会社は物件を売却して終わりではなく、引き続き、管理運営業務に携わるのが通常です。

このため、対象物件からの収入や費用について、常に不動産小口化商品を購入した複数人に監視される形になります。この点から、不動産小口化商品の対象となる物件は、安易に提供した物件ではなく、不動産のプロが安定性や将来性を見込んで選定した不動産といえ、不動産取引に深い経験がない一般投資家が、不動産会社に言われるまま購入した不動産よりも優良物件であると言ってよいかもしれません。

②区分所有マンションに比べて空室リスクが少ない

例えば1,000万円の資金でマンションの1室を購入した場合と、不動産小口化商品を購入した場合ですが、マンションの1室のみの取得では、退去があると入居まで賃料収入はゼロとなります。

一方、不動産小口化商品であれば、1室が空室となっても、残りの区画の賃料収入があるため、賃料収入がゼロになるリスクは少ないといえます。

③運用をプロに任せられ、手間がかからない

不動産投資においては、不動産を購入した後も、新規入居者の募集、入金管理、物件の維持管理などの業務が発生します。これらの判断を含む管理運営業務は、手間がかかるだけでなく、交渉や新規客獲得ルートがあるかにより収入は大きく影響し、また不動産の価値を維持していくためには、購入後も修繕計画を立て価値を維持していく必要があります。

このため、手間がかからないという点だけでなく、一般の投資家が管理運営するよりも、不動産のプロに任せる方が投資収益にプラスに働く可能性が高くなります。

財産拡大と相続税対策のために不動産投資される場合、現在はご本人が管理運営していても、引退後や相続後に後継者が管理運営業務に十分な時間を割けるとも限りません。このような点からも、判断業務も含めて管理運営一切をプロに任せるという体制が良いという方は多くいらっしゃいます。

また不動産小口化商品では、予め存続期間が決められていることが多く、市場の動向を見つつ任意のタイミングで売却されます。一般の投資家は、物件の売り時を見つけることは難しく、最良のタイミングで売却され現金化できるという利点もあります。

なお不動産を売却して利益が出たときは税金を納める必要があるのですが、取得後すぐに売却すると税制上不利な短期譲渡所得になるので、任意のタイミングで売却されるといっても、通常は5年以上経ってからとなります。

この点から、不動産小口化商品は、売り時を見つけて現金化することで完結する商品ともいえるため、不動産売却としての出口戦略についても、購入時に確認しておくことが望ましいといえます。

④不動産小口化商品は、相続人や受贈者が複数いる場合、分割して相続や贈与できる

相続財産の大半を一棟ビルが占める場合、複数の相続人の間でどのように分割するか争いになることがあります。相続人間で均等に分割することが決まったとしても、どう分割するかも争いの原因になります。一棟ビルを売却して相続人で均等に分割するのか、ひとりが一棟ビルを相続して、他の相続人に金銭を払うのか、不動産を共有にするのかなどです。

このような争いを防ぎ、次世代に財産を承継させていくことを検討するのが相続税の生前対策なのですが、解決策のひとつが、不動産小口化商品です。

不動産小口化商品は、例えば購入した10口を、さらに1口単位に分割して相続できるので、各相続人が均等に、もしくは被相続人の意向に沿って不動産小口化商品を相続させることが容易となります。

生前贈与も同様です。不動産小口化商品であれば、受贈者が複数いても、取得した不動産を分割して、均等に贈与することができます。

⑤金融商品と異なり相続税評価額が低い

現金預金や上場有価証券などの金融商品の相続税評価額は時価で評価されます。一方、不動産は路線価や固定資産税評価額を基礎に算出されるため、時価よりも低く評価されます。

不動産小口化商品は、不動産持分を投資家が直接取得するものであるため、その相続税評価額は、不動産の相続税評価額となります。このため、現金預金や上場有価証券などで保有しておくよりも、低い相続税評価額となり節税となります。

なお、少ない資金で不動産に投資できるという点で不動産小口化商品と類似するものに、上場不動産投資信託(REIT)があります。上場不動産投資信託(REIT)は、間接的には不動産を取得するのですが、不動産に投資する投資法人の投資証券を取得する金融商品であり、時価で評価されるため、不動産小口化商品のような節税効果はありません。

 デメリット

①管理運営をまかせることになるため、管理コストがかかる

メリットとして、運用をプロに任せられ、手間がかからない点を挙げました。管理運営をプロに任せるため、その分コストはかかります。

会社で従業員を雇うのと同様、不動産賃貸の管理運営を任せるためのコストなのでそれ自体は悪ではないのですが、どれくらいコストが生じるかは、それぞれの不動産小口化商品により異なります。

購入する際は、管理運営コストや売却時のコストがどの程度発生するかを確認し、他の不動産小口化商品との比較や区分所有マンションとの経費を引いた後の実質利回りとの比較をし、投資決定することが推奨されます。

②不動産の売却時期を決定できない

不動産小口化商品では、賃料収入から各種経費を控除した想定利回りが提示されます。存続期間中は、提示した想定利回りとなるよう予算通りに運営され、その後、最良なタイミングで売却されます。

対象不動産の売却についても、契約で合意した通りに売却されるのですが、運用期間の末日で売却するのではなく、運用期間中に、市場の状況を見て最良なタイミングで売却するものです。売却される日は明確となりません。

このように、1棟すべてや区分所有で取得している場合と異なり、対象物件の売却に反対でも、任意の時点で売却されるというリスクがあります。

不動産小口化商品は半永続的に持ち続けるものではなく、加えて、将来の物件価格上昇期待のため、都心の優良物件など利回りが抑えられる物件も多く、随時市場の最良なタイミングで売却されるものと捉えれば良いのですが、持分取得であるためにデメリットとなる場合もあります。

もし資産管理会社が相続税対策を兼ねて不動産小口化商品を購入した場合、相続税上の株式評価額において、不動産評価額が下がるのは取得後3年経過している必要があります。このため、資産管理会社が購入した不動産小口化商品の対象物件が売却され現金化され、その後に買い換えた不動産が、取得から3年経過せずに相続が発生した場合、結果として節税にならないことも想定されます。

また個人で購入した場合、不動産取得後3年経過しないと相続税評価額が下がらないということはないのですが、病気等により意思決定ができない状況で小口化不動産が現金化された場合、不動産の買換えができないことも想定され、留意が必要です。

この②は、売却したくないタイミングで不動産小口化商品の対象物件が売却されるケースです。不動産小口化商品の存続期間中に持分を売却したいケースは次の③になります。

③不動産小口化商品の運用期間中の売却方法が通常の不動産とは異なる

区分所有のマンションや一棟で購入した収益性ビルを売却する場合、どの不動産会社にでも、売却を依頼すれば売却できます。

対して、不動産小口化商品の運用期間中に売却したい場合、不動産そのものを売却するのではなく、不動産小口化商品の持分を売却することになります。不動産小口化商品は、どの不動産会社でも扱えるものではなく、不動産特定共同事業者として登録している事業者に限られます。このため、不動産小口化商品を組成した不動産会社に依頼することが一般的です。

不動産小口化商品の市場は、通常の不動産市場ほど一般的ではないため、限られた売却方法になりやすい傾向があると言えます。

このため、不動産を売却して相続税の納税資金を確保することを想定している場合など、不動産小口化商品は、持分100%の不動産を売却する場合に比較して流動性が低く、市況が悪いときは特に、市場価格より低い価格で売却せざるを得ないというリスクはあると考えます。

④融資を受けられない可能性がある

不動産小口化商品は、区分所有マンションや収益性ビル一棟購入する場合と異なり、不動産持分の一部を取得することになります。

不動産小口化商品では、出資者の共有持分が登記されないことが多く、この場合、抵当権の設定ができません。また持分の売却についての制約があることもあり、不動産小口化商品のみを担保として融資を受けることは難しいかもしれません。

この点からは、借入により不動産投資を拡大していくスタイルではなく、余剰資金や他に担保がある場合に向くものといえます。

 不動産小口化商品購入のご相談

不動産小口化商品のメリットは上述した通りですが、特に①優良物件を予算に応じて購入できる、②運用判断、指図を不動産のプロに任せられる、③購入した不動産小口化商品をさらに分割して相続や生前贈与できる点が優れていると考えます。

一方、不動産を持分で取得することからの特有の留意点があります。この留意点が、解決できないデメリットとなる場合は購入を控え、他の投資案や相続税対策を図ることが望まれます。

また不動産小口化商品は、利回りだけを見れば良いわけではなく、購入目的に応じた物件であること、契約内容を運用期間や管理報酬、売却時の報酬なども含め検討すべきです。

さらに、当会計事務所では、購入を予定されている不動産小口化商品そのものの検討だけでなく、ご必要に応じて、お客様ごとに異なる取得目的、資金状況、所得税率、資産管理会社の状況などから、複数ある不動産小口化商品を選定し、もしくは他の代替案を取るべきかを提案していますので、是非お問い合わせください。

お問い合わせはこちら

また、不動産小口化商品の会計・税務について「不動産小口化商品の会計・税務申告」に記載しています。

タイトルとURLをコピーしました